鳥の巣箱

せまいところですが、ごゆっくり

【アルバニア旅行③】アルバニアから一歩出てみたPogradec-Ohrid

首を縦にふる男

ポグラデッツはヨーロッパ最古の湖と言われているオフリド湖を挟んで、隣国のマケドニアと国境を接する町。夏は湖目当てで多くの観光客が訪れる。結構大きいホテルもあって、バックバッカーズホステルもあった。私は後者に宿泊したが、やはり閑散期ということで宿泊客は私だけだった。

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ポグラデッツのバッカーホステル


到着した日はもう日暮れに近かったけれども湖の周りを散歩。思った以上に綺麗で落ち着く場所だった。小学生くらいの子供達がわさわさと近寄って「ポグラデッツはどう?綺麗でしょう?」と習いたての英語で話しかけてくる。事実美しい。町の規模はベラトと同じくらいだが、湖の周りでいつも散歩するからか穏やかな空気が人々から感じられる。次は湖で泳げる時期に来たいと思いつつ、観光客がいないのんびりした雰囲気もじんわり染みる。

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次の日、私は朝からお隣のマケドニアオフリド市に行くことにした。車で1時間弱なので日帰りでも十分行けそうだ。ポグラデッツからオフリドに行くには、まずミニバンに15分くらい乗って国境まで行く。それから入管を通ってマケドニアに入り、バスに乗り換えてオフリド旧市街まで行く。私はホステルのオヤジから教わった通りの場所で、ミニバンらしきものが止まってたので、声をかけた。「オフリドに行きますか?」運転手は黙ったまま一回すっと首を横に振る。「(このバンじゃないのか)じゃあどのバンがオフリドまで行くんですか?」うんちゃんは「?」の顔。もう一度聞く「これはオフリドに行く?」首を横に振るうんちゃん。「あぁ、そうですか、じゃあとりあえず他を当たります」と言って行こうとすると、うんちゃんは「えっなんで」と言うように止めようとする、「オフリド行くの?」もう一度聞くと、うんちゃんは私をバンに促す。中学生のころ、ブルガリアではYesの時に首を横に振り、Noの時は首を縦に振るという豆知識を英語の授業で習ったことがあったな、と思い出す。THE・異文化交流。

バンは15分くらいで国境に着いた。車が列を作っていたが、私は歩いて行こうとした。すると1人のアルバニア人の男がわりと流暢な英語で話しかけて来た。

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アルバニアマケドニアの国境

車に乗せたがるアルバニア人

オフリド市内まで30kmあるから歩きは無理だよ、僕は今日オフリドで用事があるから市内まで君を連れて行ってあげる。帰りも乗せて帰ってあげるから●●レクでどう?」私はバスに乗ると言って立ち去ろうとしたが、こいつがなかなかシツコい。断っているのに追いかけてきて、自分のパスポートなんかを見せてくる。今の私ならこんな輩はガン無視だが、その時はアルバニアの非観光地的雰囲気で耐性を失っていて、押しに負けて、その男の車に乗ってしまった。でも乗ってからすぐに後悔した。バスの本数が少ないなんて出まかせに決まってる。こいつは非合法な個人タクシー業者だ。要求金額も法外に高いに違いない。アルバニア人の中でも異例の胡散臭さ放つ男の車になんで乗ってしまったんだろう。アルバニアを旅する人の共通の感想として、アルバニア人はいい意味でも悪い意味でも観光客を特別視しない。釣銭をごまかされたり、ぼられたり、不快な客引きにあった人の話を聞いたことがない。すでに書いたように、観光産業で儲けられるほど観光客がいないからだ。

後悔が止まらない中、車はアルバニアの国境を通過し、マケドニアの国境を越えようとしたところで問題が発生した。理由はわからない。とにかく入管の職員と男が激しい言い争いをはじめ、職員は私に車から降りるように言った。職員は私にマケドニアに何しに行く?と聞いて、私は「オフリド市内を観光して今日中に戻る」と言った。職員は「路なりに5分歩け。バス停があるからそこでバスに乗って行くんだ」と言った。はいそうするつもりだったんです!と嬉しさ半分と動揺半分だった。職員の男に対する高圧的な態度と怒鳴り声でびびってしまっていた。そそくさとその場を後にした。もう、自分の足と公共交通機関だけで行こうと心に決めたが、歩けども歩けどもバス停がないのだ。10分以上は歩いているはずだが、あるのはコンクリの道路。と乗用車しかもそのアルバニア側からの車がいちいちクラクションを鳴らして乗らないか?と止まるのである。中には金額を提示する者もいて、タダで乗せてやるよと言う人もいる。低速で私の方を無言で見るだけと言う人もいる。今度も私は押しに負けて静かそうなアルバニア人の男の車に乗った。結局タダでオフリド市内まで来れた。

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マケドニアオフリド旧市街

カネが正常に回っている世界に帰ってきた感

マケドニアに入った瞬間、自分がよく知る世界の側に戻ってきたな、という実感があった。北朝鮮から韓国に行ったら同じ感覚がするんだろう。経済が世界水準に回って、余剰な物とカネの循環の作用が行き届いている世界だ。例えば道路がキチンと舗装されているとか、古くなったものは定期的にその機能が損なわれる前に新しく買い換えられているとか、道路にゴミや動物の死体がないとか、自然の空間やメカニズムと人間の領域が明確に線引きされている状態が砂埃の一粒に到るまで当たり前のように実現できているのだ。こうして隣国に一歩足を踏み入れて見ると、アルバニアと言う国が近隣の国といかに明確に線引きされ、独自のやり方で存続してきたのかと言うことが実感できた。さらに資本主義と社会主義の境に加え、イスラーム文化とキリスト正教文化の境も濃く感じた。アルバニアから一歩外の隣国に出れば、もうモスクはない。もちろん海を渡ればトルコがあるが。なぜバルカン半島の他の国と違って、アルバニアだけがオスマン帝国支配時にムスリムへの改宗が進んだのか。理由はわからないけれど、その偶然か必然がアルバニア独自の文化の核となり、社会主義からの鎖国への独自路線を走らせたのだ。

とそんなことを感慨にふけりながら考え、オフリド旧市街を観光したが。東方正教会の美しい壁画や建築を見にきた観光客でごった返した活況にいささか面食らってしまった。観光地はどこもディズニーランドと変わらない、あるのは夢「ここは東方正教会の聖地」と洗脳「ロゴ付き土産の山と、ソフトクリーム」のサイクルだ。旧市街は教会や、城跡と言った拠点ごとに入場料をとる。ボランティアガイドがいて、説明が終わるとチップをくれと言う。東欧中、中東方面からも観光客がきているみたいだった。こんな一大観光地だったとは・・・1時間ほどでアルバニアが恋しくなった。

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キリスト教世界最古級のモザイク