鳥の巣箱

せまいところですが、ごゆっくり

【アルバニア旅行④】マケドニアとアルバニアの国境でヒッチハイクOhrid-Pogradec

アルバニア国境までバスがあるはずだ。でも私はなんだか歩きたい気分だった。来るときここまでずっと一本道だったし、途中までオフリド湖に沿って歩くのは気持ち良さそうだった。30キロ、車では約40分。私は中学のころ体育のマラソンで3キロを約20分で走っていた記憶がある。20分×10で約3時間。走るのではなく早歩きなので2倍の6時間くらいで国境まで行ける計算だ。今はちょうど昼だから夕食時くらいまでには着けるだろう。この計算は全くの不正解であったことが後に判明する。

さあ出発だ。

  

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大観光地なので人通りが多い

 

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沈みゆく太陽を追いかけながらひたすら湖沿いを歩く

 

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まだまだ余裕だと思いながら、暑いのでダウンを脱いで歩く。汗を流す

 

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やたら木の写真を撮る

 

 

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カップルいいなーとか思う

 

 

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やたら木を撮る

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湖って海とちがって波の音がしなくて、ずっと見ていると穏やかな気分になる。

 

旅人と再会

ここで、アルバニア側から走ってきた乗用車が通り過ぎ、バックして私の隣に止まる。渋いおっちゃんが運転している。その助手席から手を振ってる女性。ベラトの宿で一緒だった台湾人女性だった。わー今からマケドニア?ああ、そうかそれからブルガリアに行くですよねーわーと嬉しくなる。運転手のおっちゃんが「もうすぐ日が暮れるからこの車に一緒に乗って、今夜はオフリドの宿に泊まりなよ」と言う。私はもうオフリドを観光し終えて、宿があるポグラデッツに歩いて帰ると言う。おっちゃんが言う。「歩いてポグラデッツ?国境まであと20キロ以上あるぞ」

え、嘘

気分的にはもう中間地点は過ぎたと思っていたので、めっちゃ焦るが

「日が暮れたら、適当にヒッチハイクするから大丈夫!」と言って別れる。

私が捕まった胡散臭いおじさんとちがって、あの台湾人の運転手はめっちゃ優しいし、英語上手だし、渋くてカッコいい。彼女はホントに旅玄人だな、と思う。ベラトでまるで黒子のように異邦人である自分の影を消してカメラで撮影していた姿といい、改めて尊敬だ。人を見る目も肥えてる。

 

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ヒッチハイクが意外に難しかった

日はあっという間に暮れた。道は一本で道なりだし、10キロは歩いたからあとその2倍歩けばいいってことでしょ?だ、だ、大丈夫、大丈夫!ここまでは写真撮りながらゆっくりし過ぎたのだし!と思いながら急ピッチで歩くがすぐに大丈夫ではないと悟る。

まず、暗いのだ。街灯が街を通り過ぎるとき以外は全くなく、たまに通る車のヘッドライト以外光源がないのだ。iPhoneでしばらく足元を照らしていたが、途中木の写真を撮り過ぎたのでバッテリーがなくなった。

そして寒さだ。山の気温は日没とともにほんの急速に冷えていった。日中暑くて脱いだダウンを羽織り、チャックを首元まで締める。それでも冷気がジーンズをしみて体温を奪っていく。手や首元から氷のように冷えて行く。

これはダメだと思った。こんな暗くて足元もおぼつかないのに歩きからマラソンに切り替えることなんて到底できない。そもそも10キロを5時間で歩いたのだから、このまま歩いたら朝になってしまう。

人生で初めてヒッチハイクをすることにした。行きは歩いているだけで向こうから話しかけてくれたのに、帰りは自分を追い越して行く車は「飛び出してくんなよ」という意味でププーとクラクションを鳴らして通り過ぎて行く。森の静寂の中、遠くから車が走ってくる音が聞こえる。「よしこの車に乗せてもらおう」と決める。ヘッドライトがほんのり自分の足元を照らす。「よし、今だ!」と意を決すが、手が上げられない。自分を乗せようとして入管で怒られたおっちゃんの車だったらどうしよう、「乗せて欲しけりゃ1万ユーロ払え」とか言われたらどうしよう。そんなこと考えると手が上げられない。手を挙げるという行為自体、小学生以来やっていない気がする。皆大好きな多数決をとるときも私はずっと“中立”という立場をとるために手を上げなかった。いやいや、ティラナでも声をかけ続けたら道がひらけたじゃないか。自分に打ち勝つんだ。と自分を説得するが、手を挙げることが恥ずかしい、ちっぽけな自尊心が手を挙げさせなかった。何台か車がアルバニア方面に走っていく。だんだん、「別にヒッチハイクしなくてもよくね?」と不要な自尊心を正当化し始める。「だって道なりじゃん、道路も舗装されてるし朝まで歩けば別に良くない?その方が冒険じゃん」この主張に納得して手を上げようとするのを辞めた。でもしばらくこの“冒険”のなかで思った。「今、たった今自分がサイコパスに殺されてバディを透明にされたとしても誰も気づかないんだろうな」自分の儚さを思ったら手が上がった。3台目で車が止まった。あの胡散臭いおっさんでは幸いなく、ポグラデッツに住むアルバニア人兄弟の車だった。後部座席は物でいっぱいだったが、「ポグラデッツに行きたい」と言うとすぐにスペースを作って乗せてくれた。お兄さんの方は全く英語が喋れず終始無口だったが、ガサゴソとチョコレートを取り出し、私に手渡してくれた。弟の方は洋ゲーで学んだというかなり流暢な英語を喋った。「大丈夫、ポグラデッツまで送るよ」という言葉にどれほど安心したことか。